日本経済新聞(2020年9月21日)にナノファイバーの高性能マスクが紹介されました。

日本経済新聞全国版(2020年9月21日)に、東京工業大学発スタートアップの株式会社Zetta(ゼタ)は、極微細な繊維「ナノファイバー」を効率的に生産する技術を持ち、ウイルス捕集効果が持続する高性能マスクで海外市場の開拓を目指すと紹介されました。

ゼタ、洗濯できる高機能マスク ウイルス捕集効果持続

地域発世界へ

日本経済新聞 電子版 スタートアップ面 2020/9/20 18:00

韓国大手と協力して抗ウイルスマスクを海外展開する(エバーグリーンの生産現場)

「2年越しの宿題がやっと解けた」。ゼタの高橋光弘会長は笑みをこぼす。今夏、ウイルスを捕集できるナノファイバーについて世界で初めて有機溶媒や高電圧を使わない安定生産に成功した。直径が0.08~0.4マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下の繊維を編んだ不織布は分子同士が強く引き合う「分子間力」が発生し、0.1マイクロメートル以下のウイルスを捕まえる。

宿題を出したのは韓国のマスク製造大手、エバーグリーンのイ・スンファン会長だ。コロナ禍前の2018年。マスクに使える新しい繊維技術を持つスタートアップの話を聞きつけ、韓国から松山を訪れた。

従来の高機能マスクは静電気でウイルスを捕まえる仕組み。呼吸の水分の影響で短時間で効果が低減するため、1日に何度も交換する弱点があった。分子間力でウイルスを捕まえるナノファイバーなら繊維が壊れない限り効果が続く。だが有機溶剤で樹脂を溶かして繊維にするため、肌に触れるマスクに使えなかった。

エバー社の要望に応えるため、ゼタは熱による溶融技術の開発に着手した。ナノファイバーは溶かした樹脂をノズルから噴き出し、風を当ててシート状にする。溶融では繊維径を十分に細かくするのが難しく、噴き出す際の温度や風の速度、ノズルの大きさなどを工夫し、ウイルス捕集に適した繊維を作る組み合わせを探り当てた。実験では新型コロナと同サイズの微粒子を95%以上捕集した。

ゼタは東工大と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のナノファイバー技術開発プロジェクトを発端とし、11年に設立した。ナノファイバー製造装置の販売などで収益を確保する一方、海水の淡水化や自動車向け部品などナノファイバーの応用方法を模索していたところにマスクに出合った。国内ではマスクとマスク用フィルターを販売中だ。

今後はエバー社に生産装置や技術を提供し、早ければ年内にも韓国で生産を開始する。エバー社は米国や欧州などの規格認証を取得済みであり、韓国で抗ウイルスマスクとしての地位を固め、将来は海外展開をもくろむ。高橋会長は「マスクに加え、建築や水の浄化の資材としてもナノファイバーでアジアや米国市場を開拓したい」と話す。

(松山支局 棗田将吾)

■会社概要 パナソニック出身の高橋光弘会長らが2011年に設立。ナノファイバーの製造技術が強みで、従来より生産効率を高めた。20年10月期の売上高は約2億3000万円の見通し。従業員数は約10人。

出典:日本経済新聞電子版